第一三六段。 「頭の弁の御許より」とて、主殿司、絵など様なる物を、白き色紙に包みて、梅の花の、いみじく咲きたるに付けて、持て来たる。「絵にやあらむ」と、急ぎ、取り入れて、見れば、餠餤(へいだん)と言ふ物を、二つ並べて、包みたるなりけり。添へたる立文(たてぶみ)に、解文(げもん)のように書きて、 進上(しんじやう)、餠餤(へいだん)、一包(ひとつつみ)。例に依りて進上(しんじゃう)、如件(くだんのごとし)。 少納言殿に とて、月日、書きて、「任那成行(みまなのなりゆき)」とて、奥に、「この男は、自ら参らむとするを、昼は、かたち、悪ろしとて、参らぬなり」と、いみじく、をかし気に、書き給ひたり。御前へ参りて、御覧ぜさすれば、(中宮定子)「めでたくも、書かれたるかな。をかしう、したり」など、誉めさせ給ひて、御文は、取らせ給ひつ。(清少納言)「返り事は如何、すべからむ。此の餠餤(へいだん)、持て..